湊かなえ『告白』 この何とも言えない読後感


湊かなえ『告白』 650円
随分前に読み終わっていたんですが、『鋼の錬金術師』全巻読むのに忙しく今日になってしまいました。

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」と、生徒を前にした教壇での先生の告白に始まり、続いて事件を巡る人々が日記であったり手紙であったりとそれぞれの形でそれぞれの立場で告白します。それぞれの告白が進むうちに事件の真相も明らかになってきます。今までもこういった構成の小説は読んだことがある気がするんですが、この作品は非常に構成が上手いなと思いました。次の章では誰が告白するのだろうかと思うとページをめくる速度も上がります。久しぶりに夢中になって読んでしまいました。

ただ設定としては無理な所も数箇所見受けられ、本格ミステリーを読み慣れていると「?」な部分がありますが、フィクションと割り切って読めば問題ないです。

この作品の核になる部分はそれぞれの告白から見えてくるそれぞれの事情でしょうか。それぞれ本人による独白なので、その人の気持ちがよく分かります。ある人から見れば理解し難い謎めいた人物でも、その人が告白すればそれなりの立場、事情が見えてきます。そうして見えてくるそれぞれの事情を理解するかどうかは読者次第です。

個人的にどの告白者も極端であり、共感はできませんでしたが、そこがなんとも言えない読後感をかもし出してくれるのです。色々議論を呼んだ作品ですが、構成の素晴らしさで、読む価値は大いにありです。