田村はまだか


おすすめの文庫、朝倉かすみ『田村はまだか』。

セリフのような題名ですが、「田村はまだか」というセリフが実際に文中に何度も出てきます。

札幌はススキノの奥まった一角にあるバー「チャオ!」。既に日付が変わった深夜。小学校のクラス会三次会。男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。

各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。

「それにつけても田村はまだか」「来いよ、田村」「田村遅いよ」「田村まだかな」「田村!」、田村待ちを酒とともに楽しむ男女5人。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。

’09年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。傑作短編「おまえ、井上鏡子だろう」を特別収録。

独特の文体がテンポ良く入ってきてすらすらと読めます。

『田村はまだか』 朝倉かすみ 光文社文庫 600円(税込)